会社員こそ確定申告をすべきだ

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※本稿は、2013年12月17日に sharescafeONLINEへ寄稿したものです。

 

 

平成26年4月から消費税が、平成27年1月からは相続税が増税される。さらに先週発表された平成26年度の税制改正案(税制改正大綱)によれば年収1,000万円超の会社員に対しても増税されることになりそうだ。このように税金の負担感、いわゆる痛税感が高まっていく中、年末調整だけで納税が完結する会社員はそれほど痛税感を感じていないのではないだろうか。後述するように会社員は所得税の計算において優遇されている点が関係しているのかもしれない。

 

折しも年末調整の時季であるが、年末調整で払いすぎた税金が戻ってくると喜ぶのではなく、自分の納税額とその計算根拠くらいは知ったうえで、税金の無駄使いに対してもう少し意識を向けるべきだ。国にはその使い道をあやふやにせずしっかりと使って欲しいと思うのは当然だが、税金の使い道を決めるのは政治家であり、その政治家を選んでいるのは国民たる我々だ。その我々が自分の納める税金の計算方法すら知らないのではこれから先まっとうな政治家を選ぶことなど無理な話だ。そこで今回は入門編として給与にかかる税金がどのように計算されているかを簡単に解説したい。

 

会社員の給与から引かれている税金は、所得税と住民税がある。所得税は国に、住民税は市区町村に納付されている。どちらも所得といわれるものにかけられる税金だが、所得税はその年の所得に対してかけられ、住民税は前年の所得に対してかけられている。では所得とはなんだろうか。簡単にいえば利益である。個人の場合、収入-経費という算式で求められる。これを給与に当てはめると、収入は給与支給額、いわゆる額面である。では経費はなんだろうか。例えば仕事の移動で使ったタクシー代は経費のように見えるが、領収書を会社に提出して精算するので会社員の経費にはならない。そう考えると会社員の具体的な経費が何で、いくらかと言われると案外難しい。仕事をしている以上、何等かの経費が発生していることは間違いないだろうが、人によっても異なるだろうし具体的によく分からないのだ。

 

このように会社員一人ひとりの経費を明らかにしていくことが非常に困難なため、実際の支出とは関係なく給与支給額に応じて一定の算式である程度“ざっくりとした経費”を個々人の経費として認めることにしたのだ。この“ざっくりとした経費”を給与所得控除という。なぜその金額なのか、とか、その内訳はどうなっているのか、など疑問はつきないが、明確な答えはなく正直私にもよく分からない。もはやどんぶり勘定である。

 

何はともあれ、こうして会社員の収入と経費が確定されて所得が求められる。この所得から差し引けるもの(所得控除という)がいくつかあるので、それらを差し引いたものに税率をかけて負担すべき所得税額が計算される。なお、住民税は市区町村から前年の所得をもとに計算された税額が会社に通知されて毎月の給与から差し引かれることになる。

 

給与所得控除は会社員にとって有利なのか

給与所得控除は上記のとおり実際の支出に関係なく給与支給額に応じて決められている。企業や自営業者は実際に支出したものしか費用や経費として認められないのだから有利であると言えるだろう。例えば年収400万円の場合の給与所得控除額は134万円である。この134万円を月換算すると約12万円だが、実際ここまで経費をかけている会社員はほとんどいないのではないだろうか。つまり、給与所得控除は実際の支出額を超えて経費として認められているのだ。支出していないものを支出したものとして計算されているわけだから年収が同じ自営業者と比べると資金繰りの面でも有利になっているのは言うまでもない。

 

会社から源泉徴収票をもらったら是非、次の欄をよく見ていただきたい。「支払金額」と「給与所得控除後の金額」の2つである。この2つ欄に記載された金額の差額が、給与所得控除額であり、あなたの経費として認められた額ということになる。実際にこの1年間で支出した経費より多いか少ないか確認して欲しい。もし、給与所得控除額の半分以上は確実に自己負担で支払ったというのであれば、特定支出控除というルールで一部経費として認められるようになっているので、このルールを活用するのもよいだろう。

 

特定支出控除について詳しくは下記を参照して欲しい。

新卒はチャンス! 自己研鑽組サラリーマンへ 特定支出控除は絶対使うべし  藤尾智之

 

このように給与所得控除は会社員にとって非常に有利であると考えられるが、冒頭に記載したように平成26年度の税制改正でこの給与所得控除が一部縮小されることになりそうだ。対象は年収1,000万円超の会社員だ。給与所得控除は年収に比例して増加する仕組みなので、際限なく経費を認めることについて以前から問題提起がなされていた。実際、平成23年度の税制改正で年収1,500万円超の場合の給与所得控除が一部縮小されている。今回の改正案では平成28年から年収1,200万円超で給与所得控除の上限が230万円に、平成29年から年収1,000万円超で上限220万円になる。対象となりそうな人は特定支出控除が使えるかどうかなど確認しておいたほうがよさそうだ。

 

年末調整ってなんだ

 

さて、会社員は給与所得控除で経費の集計などしなくても経費が確定するため、年収さえ分かれば会社員自身で税金計算まで出来ることになる。ただ、会社も当然に個々人の所得まで分かるので所得控除も含めて会社に計算させて、納税までさせてしまおうというのが年末調整である。生命保険料控除や住宅ローン控除(2年目以降。初年度は確定申告が必要)などの証明書類を会社に提出しているのはこのためである。こうして会社は年末調整で会社員が1年間で負担すべき所得税額を確定させて会社員の代わりに納税するのだが、毎月の給与から所得税を徴収しているので、その徴収額が確定額より多ければ超過分を還付し、少なければ12月の給与で不足分を徴収することになる。私も会社員時代に数万円という単位で徴収されて唖然とした記憶がある。年末調整=税金が返ってくる。というわけではないので注意しておこう。

 

このように会社員は給与所得控除と年末調整があるおかげで、経費の集計をしなくて済み、会社が納税までしてくれる、という非常に楽なというか、恵まれた環境にある。だからこそ痛税感を感じにくくなってしまったとも言える。

 

年末調整できない所得控除は確定申告で

 

これまで記載したように、会社が年末調整してくれることで会社員の納税は完了するが、年末調整では処理できないケースもある。そのような場合は会社員が自分で確定申告をすることになる。例えば、医療費が一定額を超えた場合、寄附をした場合、住宅ローン控除の適用を初めて受ける場合、特定支出控除を適用させたい場合などがそれにあたる。また、年末調整で処理できるものでも生命保険料控除証明書などの必要書類の提出を忘れてしまった場合も確定申告をすることで反映させることができる。

 

まずは自分で確定申告をやってみるべき

 

自分の納める税金の計算方法を知っておくべきだと冒頭で書いているが、具体的にどうすればより理解が深まるかというと、毎年自分で確定申告をすることである。

そこで毎年寄附することをお勧めしたい。寄附金控除は年末調整で処理できないので確定申告が必要となってくるからだ。

何も何十万円寄附しろというわけではない。1万円程度でもよい。所得税の還付額は少額かもしれないが確定申告をすることで所得控除などの仕組みも理解でき、毎年の税制改正でどこが変わったのかも分かってくる。そうすればその改正が自分の納税額に与えた影響も如実に見えてくるはずだ。今は国税庁のHPで簡単に確定申告書が作成できるので是非今年分から挑戦してみて欲しい。

多少なりとも手間をかけて確定申告をすると税金の使い道がすごく気になってくるはずだ。大増税時代に突入する今、一人ひとりのその意識が大事になってくると考える。

※わかりやすく説明するため、税法上の用語ではなく簡易な表現をしているところがあります。

《参考記事》

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栗田倫也 税理士