免税事業者が増税分を値上げしても問題ないか?

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消費税率が8%になってそろそろ1か月が経つ。この間、各企業は価格を据え置いたり、増税分を価格転嫁したり、と苦心している。

しかし、消費税を納める義務のない法人・個人事業主(免税事業者という)については、その売上に消費税はかからないのだから増税分を価格に転嫁する必要はないのでは?と考える人もいるようだ。免税事業者が増税に伴って値上げすることに問題あるのか?ないのか? この点を簡単にまとめてみたい。

 消費税を納める義務のある者

原則として、法人や個人事業主の「消費税をかけるべき売上」が1年間で1,000万円を超えると、その2年後の事業年度から消費税を納める義務が生ずる。つまり課税事業者となる。

そして、納付すべき税額は、「預かった消費税」-「支払った消費税」で計算されるのが原則となっている。

 

例えば、とある製品の販売価格が税込1,080万円、その製品の仕入れが税込756万円、その他経費が税込108万円だとすると、預かった消費税は80万円、支払った消費税は64万円(56万円+8万円)であるから、納付すべき消費税額は16万円(80万円-64万円)となる。

 

また、その課税事業者の利益について消費税はどう影響するだろうか。

 

会計処理の方法によって計算方法が異なるのだが、先の例で見れば、税抜価格の売上-仕入れ-経費で計算された金額200万円(1,000万円-700万円-100万円)がだいたいの利益となる。

 

つまり、消費税の課税事業者の利益計算において消費税は影響されないということになる。税率が5%の場合、先ほどの製品は販売価格1,050万円(仕入735万円、その他経費105万円)であるが、利益はやはり200万円である。税率が8%になっても同じということになる。

免税事業者の利益計算

では、免税事業者の場合の利益計算はどうなっているだろうか。

 

消費税を納める義務がないわけだから、利益計算するうえで消費税のことは一切考えなくてよい。

 

つまり、製品を1,080万円で販売してもそれは消費税を含んだ価格ではなく、課税事業者から見た税抜価格と同じ扱いとなる。そのため、利益計算するうえでは1,080万円のままとなる。仕入れや経費も同様である。免税事業者の利益は1,080万円-756万円-108万円=216万円となり、課税事業者よりも16万円ほど利益が多くなる。

もし、経費が540万円かかってしまった場合216万円の赤字となるが、支払った消費税について共済措置はない。課税事業者の場合には、還付という手段があるのだが、これが免税事業者の不利な点である。

なお、この例の場合、消費税がかかるべき売上が1,000万円を超えるため、この免税事業者は2年後から課税事業者となる。

 免税事業者の販売価格

こう見ると、免税事業者が不当に儲けているように見えなくもない。

 

消費税率が5%の時から考えてみよう。

 

先の例の場合、製品の税抜価格は1,000万円なのだから消費税を預かる必要のない免税事業者は1,000万円で販売すればよい。しかし、仕入れは735万円、その他経費は105万円である。免税事業者であっても仕入れや経費に関しては消費税がかけられた金額を支払うしかない。この場合の利益は1,000万円-735万円-105万円=160万円となり、消費税負担分(40万円)だけ利益が圧迫される。そこで、適正な利益を確保するため販売価格を値上げすることになる。いくら値上げすべきかとなると、仕入れや経費で負担した消費税分40万円の値上げが一番理解が得られるところなのだろうが、実務上これらを正確に算出して販売価格を導き出すのは煩雑であるため、販売価格を5%の税込価格と同じになるようにしてしまう。その結果、1,050万円-735万円-105万円=210万円の利益となり、課税事業者より10万円多く儲けてしまうことになる。

 

そして、消費税率が8%になった。

 

免税事業者はどう対応したのか?

 

仕入れ価格が756万円、経費が108万円になったのだから、販売価格を据え置くと当然に利益は減少する(1,050万円-756万円-108万円=186万円<210万円)。

そこで減益回避のために値上げするのだが、ここでも計算が煩雑であるため販売価格を8%の税込価格と同じ1,080万円とすることになるのだ。

 

課税事業者と免税事業者の販売価格の違い

両者の販売価格は根本的に異なる。つまり、課税事業者の販売価格には消費税が含まれているが、免税事業者の販売価格には消費税が含まれていない。

そして、増税の際に販売価格が上がるということは、課税事業者の「消費税が転嫁された場合」と、免税事業者の「減益回避のために値上げした場合」に分けられる。

 

「減益回避のための値上げ」が問題かどうかということで言えば、利益を出すことが至上命題である以上、企業努力で経費増加分を吸収できないのであれば値上げはまったく問題ないと考える。しかし、仕入れや経費にかかる増税分を超える値上げであると、例えば、販売価格を税込価格に合わせると、いわゆる「益税」による問題が生じてしまうこととなる。

 

とはいえ、現在の消費税法の仕組みにおいては規制することができないため、実務上黙認されてしまっているといえる。

最終的な答えを出すためには、益税問題を解決しなければならないということだ。