法人成りの6つの留意点

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※本稿は、2014年11月18日にLAOアライアンスのサイトへ寄稿したものです。

 

近年の税制改正の傾向は所得税は増税、法人税は減税となっています。そのため、個人事業主が法人を設立して事業を引き継ぐ、いわゆる法人成りが増えていくことが想定されます。今回は法人成りをする場合、どのような点に留意すべきか会計税務面から確認してみます。

1.個人から法人への棚卸資産の移転

法人での事業を開始するにあたり、個人所有の棚卸資産は法人に移しておく必要があります。この手続きは、個人から法人への譲渡になりますが個人の事業所得の計算に含めなければならないという点に注意しなければなりません。また、その時の譲渡価額にも注意が必要です。通常譲渡額の70%と仕入額のいずれか高いほうの金額で譲渡すれば問題ありませんが、それ以下の金額で譲渡すると法人は特別な利益を受けたとして、その受けた利益を法人側で収益計上しなければなりません。個人として完全に売り切ってから法人成りをするというのも手ですが、どちらも事業所得となることを考えれば定価販売しなくてもよい法人に譲渡したほうがよいでしょう。

2.個人から法人への固定資産の移転

個人所有の事業用固定資産は法人に譲渡または賃貸することになります。

譲渡した場合、法人では固定資産に計上しその後減価償却費を計上することになります。個人では譲渡に伴って譲渡益が生じていれば所得税が課税されますが、事業所得ではなく譲渡所得である点に注意が必要です。機械装置や車両、器具備品等であれば、減価償却後の帳簿価額が時価相当と考えられますので、帳簿価額で譲渡すれば譲渡益はほとんど生ずることはないでしょう。しかし、不動産賃貸業などの場合にあっては、土地建物の含み損益だけでなく、自身の相続に与える影響もあるため、多方面から検討して、譲渡するか、賃貸するかの判断が必要となります。

賃貸した場合、法人では固定資産に計上されず賃借料だけが経費となります。個人では雑所得(その固定資産が不動産の場合には不動産所得)として確定申告が必要となります。

3.個人から法人への名義の変更

個人名義で契約していた事務所、水光熱費等の経費の支払いも法人名義へ変更することになります。これは名義の変更だけですので大きな手間にはならないと思います。しかし、自宅(賃貸)を法人の事務所とする場合には注意すべき点があります。家主との契約を法人名義にするか、個人名義のままにするかで会計税務上の取り扱いが変わってくるからです。

法人名義とした場合は個人から法人に社宅家賃の支払いを、個人名義のままとした場合は法人から個人に事務所家賃の支払いをする必要があります。社宅家賃を無償とするとその分個人への給与とされ、個人に思わぬ税金が生ずることになりますので注意しなければなりません。支払うべき金額は自宅のうちそれぞれの用に供する部分の面積に応じて計算するなどすれば税務上のリスクは低減できるでしょう。

 4.個人事業主時代の売掛金、買掛金、未払経費等の取り扱い

個人事業主時代に生じた売掛金、買掛金、未払経費等はどうすべきでしょうか。これは個人名義のままとすることが多いですが、売掛金が法人口座に振り込まれた場合には注意しましょう。個人に対して支払われたものを法人の売上や売掛金の回収としてはいけないからです。預り金や仮受金として処理し個人にきちんと渡しましょう。逆に法人の売掛金が個人口座に振込まれたときも同様です。

また、買掛金、未払経費等の支払いについても、法人のものか、個人のものか混同せずに管理し、もし個人の支払いを法人の口座からしたら立替金として処理し、個人からきちんと回収することが大事です。

法人成りにあたっては、個人事業主時代と同じような感覚でのお金の出し入れをしてはいけません。法人のお金は自分のものではありませんので、混同せずにしっかりと管理することを心がけてください。

 5.消費税の納税義務

個人事業主のときに消費税の納税義務者であった場合、棚卸資産や固定資産の法人への譲渡にも消費税がかかるため想定外の納税額になる可能性があります。そのため納税資金のことも忘れずに資金繰りの計算に入れておいてください。法人については設立時の資本金が1,000万円未満であれば設立初年度の納税義務はありません。別途届出を期限までに提出すれば消費税の納税義務者となることも可能ですが、この点は利益計画や今後の設備投資計画等との兼ね合いもありますので慎重な検討が必要となります。

 6.個人事業主の最後の確定申告

法人で事業を開始できる状況になれば個人事業は廃止できますので、税務署に個人事業の廃業届を提出しましょう。忘れてならなのが廃業年分の確定申告です。提出期限は通常と変わらず所得税が翌年の3月15日、消費税が翌年3月31日です。法人から役員報酬をもらうようになっていれば役員報酬分は年末調整で計算しますが、それだけでは完結せずに事業所得や場合によっては譲渡所得も含めた確定申告が必要ですので忘れずに申告しましょう。

まとめ

法人成りした際の会計税務上の留意点を確認しましたが、これは一般的に言われていることです。実際には個々の事情によってどのように処理すべきか悩む点も多いと思いますので、そのようなときは専門家と相談しながら進めるのがよいでしょう。